<エックス線を必要としない歯科医療への挑戦>
―歯科超音波診断ポータルサイト―
このページは、歯科診療における超音波診断をサポートするために開設したサイトです。
[花村信之メモリアルレクチャー「歯科における超音波診断の将来展望(NPO法人日本歯科放射線学会総会・学術大会,2010年4月24日,横浜市)」抄録より]
歯科放射線診療の分野では、超音波診断は有益な画像診断法のひとつとして存在意義がそれなりに評価されてきていますが、一般歯科診療において、今後、超音波診断が広く普及し導入されていく可能性はあるのでしょうか? 毎年開催されている超音波診断法の実技研修会には、開業されている先生方も少なからず参加されていますが、私見では、現在普及している装置では、「帯に短し襷に長し」といった感があります。
歯科放射線診療においてこれまで超音波診断が利用されてきた領域には、大唾液腺、頸部リンパ節、咀嚼筋、舌・頬粘膜などがあり、さらに顎関節、神経(節)、血管などが挙げられますが、歯科の中でも口腔外科的な領域に偏っており、一般歯科診療からはやや縁遠いと言わざるを得ません。超音波診断を一般歯科診療で使うといった状況を想定した場合、歯や歯周組織への応用が主眼となると思われますが、この領域では先駆的研究はあるものの普遍化するには至っていません。また超音波診断の特徴のひとつに、撮影と同時に画像を解釈し診断を行うという特性があり、一部では撮影を半自動化し独立して読影する方法も試みられていますが、基本的には撮
影と画像解釈に経験とスキルが要求され、それが大きな壁となっています。歯科で普及するためには、さらなる装置の小型化・低廉化とともに、撮影の簡便さを含めた画像解釈の容易さが必須となると思われます。逆に言えば、歯科臨床に適合したソフト・ハード的な大変革があれば、将来的に潜在需要を掘り起こすことも不可能ではないと考えます。
新潟大学医歯学総合病院・歯科 画像診断・診療室における超音波診断の検査件数は、現在年間1,100件程度で、漸増傾向にあります(2004年度612件,2005年度960件,2006年度876件,2007年度999件,2008年度1,081件,2009年度1,168件,2010年度1,114件)。
当診療室では以前より口腔癌頸部リンパ節転移の早期診断に取り組み、携帯型超音波診断装置を導入して、感度64%、特異度99%、正診率93%の診断精度を得ています(日口外誌 2009;55(8):408-414)。
一方、医科の装置利用により組織弾性イメージング(エラストグラフィー)の導入にも取り組み、感度92%、特異度86%、正診率98%と精度向上がみられることを報告しました(頭頸部癌 2008;34(4):518-525)。
また、顎関節症に対しても積極的に応用を試み、特に混合歯列期の学童に対する潜在的な関節円板転位の検出を主眼として診断基準に検討を加えた結果、感度83%、特異度96%、正診率92%という診断精度を得ています(Am J Neuroradiol 2001;22(4):728-734)。
こうした歯科領域における超音波診断の適用拡大に関しましては、拙著レビュー論文をご覧ください(Hayashi T. Application of ultrasonography in dentistry. Jpn Dent Sci Rev 2011 )。
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顎顔面放射線学分野(旧歯科放射線学講座)
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