<エックス線を必要としない歯科医療への挑戦>

―歯科超音波診断ポータルサイト―


ポケットオーラルエコー®(2025年10月1日PMDA認可取得)


このページは、歯科診療における超音波診断をサポートするために開設したサイトです。

[NPO法人日本歯科放射線学会メールマガジン第26号(2025年2月)掲載記事より転載]
口腔内超音波診断にはホッケースティック型等の術中用小型探触子が用いられる場合が多いが、その形状は口腔内走査が有効な舌側縁や頰粘膜に必ずしも適していない。
私どもが関わらせていただいている超音波ハンズオン等でのインストラクションの経験からみても、超音波診断に慣れていない検査者にとっては、口腔内での扱いに少々難儀される印象を持っている。
また特殊な探触子であり利用頻度も低く比較的高価なため、超音波診断装置を有する多くの施設において、その普及は十分とはいえない。
そこで私どもは、歯科メーカーとの共同研究開発により、歯科専用で廉価な口腔内探触子の開発を目指すこととした。
形状としては、「触診の視覚化」というコンセプトのもと、指先の延長上というイメージに基づいて「歯ブラシ型」を提案した。
これがポケットオーラルエコー®であるが、もともとは同社との間で2018年に開始された、口腔粘膜に特化した音響カップリング材の共同研究に端を発しており、粘膜上皮層、粘膜下(結合組織)層、固有筋層の口腔粘膜3層構造を明確に同定することを主眼としていた。
これは、口腔癌の正確な深達度(DOI)計測には、腫瘍周囲の正常粘膜上皮基底部の特定が必須となるためである。
しかし、一般に普及している音響カップリング材は、無エコーであるため粘膜表面での反射が強く、DOI計測精度に影響するほどではないものの、多重反射によるアーチファクトが粘膜上皮基底部に生じてしまう欠点を有しており、また高価でもある。
研究の結果、筋組織や結合組織に近い内部エコーを有する音響カップリング材の方が、多重反射が少なく上皮釘脚構造も描出しうる可能性があり、理想的であることが明らかとなった。
この目的に合致する安価な材料として、寒天製の音響カップリング材の有用性が示唆されたが、同時にDOI計測に適した歯科専用探触子の必要性が認識され、ポケットオーラルエコー®の開発に繋がった。
プロトタイプは2019年に組み上げられたが、一般的な頸部用超音波診断装置の延長線上の性能であったため、超音波性能評価ファントムや特注模擬舌癌ファントムを使った実験を繰り返し、歯科において求められる浅い領域(粘膜面から深さ2 cm以内)での距離分解能の確保を念頭に、ハード・ソフト両面からブラッシュアップをしていただいた。
また探触子の持ち手の形状については、3Dプリンターによる試作モデルを複数作成してもらい、試用と修正を繰り返して2024年3月の試作機の完成に至っている。特に探触子走査面の形状にはこだわりが詰まっている。

[NPO法人日本歯科放射線学会メールマガジン第27号(2025年3月)掲載記事より転載]
2004年7月、新潟歯学会での教授就任講演の際、私は歯科用超音波診断装置の理想像として、手持ちの薄型ノートパソコンと棒状探触子を並べ、USB接続を夢見たイメージ画像を提示した。
それから20年、当時の理想を遥かに超える装置が比較的安価に入手できるようになった。
2010年4月には、日本歯科放射線学会第51回総会・学術大会(鶴見大学)で「歯科に特化した超音波診断装置の開発とその普及をめざして」と題した講演を行った。
この時点で既にGE社やSonoSite社のノートパソコン型+ホッケースティック型探触子を使用していたが、さらなる小型化(ポケット化・ワイヤレス化)と口腔内超音波診断トレーニングファントムの必要性を強調した。
そして現在、装置のスマホ化・タブレット化・ワイヤレス化が実現し、昨年のクラウドファンディング成立を経て、舌癌の口腔内超音波診断トレーニングファントムの開発にも目処がついた。
このように、理想を語ることで数年〜十数年後には具現化することが分かったため、コラム最終回では、今後の歯科超音波診断装置の理想像を記しておきたい。
現状、装置はスマホ化したものの、口腔内では両手を使うため、指での操作は極力控えたい。
そこでポケットオーラルエコー®では、動画記録をデフォルトとし、フリーズボタンを大きく配置し、さらに音声認識機能を併用できるようにした。
しかし、口腔内と画面を交互に見る煩雑さは残るため、現在は超音波動画をウェアラブルモニタに表示し、視線移動を最小限に抑えるシステムを開発中である。
将来的にはAIアノテーションやイベント記録機能を搭載し、ウェアラブルモニタへの直接通信によりスマホレス・タブレットレスを実現したい。
すなわち、ケーブルもなく、本体やモニタすら不要な真の「歯ブラシ型」ポケットオーラルエコー®の完成を目指している。

[花村信之メモリアルレクチャー「歯科における超音波診断の将来展望(NPO法人日本歯科放射線学会総会・学術大会,2010年4月24日,横浜市)」抄録より]
歯科放射線診療の分野では、超音波診断は有益な画像診断法のひとつとして存在意義がそれなりに評価されてきていますが、一般歯科診療において、今後、超音波診断が広く普及し導入されていく可能性はあるのでしょうか? 毎年開催されている超音波診断法の実技研修会には、開業されている先生方も少なからず参加されていますが、私見では、現在普及している装置では、「帯に短し襷に長し」といった感があります。
歯科放射線診療においてこれまで超音波診断が利用されてきた領域には、大唾液腺、頸部リンパ節、咀嚼筋、舌・頬粘膜などがあり、さらに顎関節、神経(節)、血管などが挙げられますが、歯科の中でも口腔外科的な領域に偏っており、一般歯科診療からはやや縁遠いと言わざるを得ません。超音波診断を一般歯科診療で使うといった状況を想定した場合、歯や歯周組織への応用が主眼となると思われますが、この領域では先駆的研究はあるものの普遍化するには至っていません。また超音波診断の特徴のひとつに、撮影と同時に画像を解釈し診断を行うという特性があり、一部では撮影を半自動化し独立して読影する方法も試みられていますが、基本的には撮 影と画像解釈に経験とスキルが要求され、それが大きな壁となっています。歯科で普及するためには、さらなる装置の小型化・低廉化とともに、撮影の簡便さを含めた画像解釈の容易さが必須となると思われます。逆に言えば、歯科臨床に適合したソフト・ハード的な大変革があれば、将来的に潜在需要を掘り起こすことも不可能ではないと考えます。


歯科領域における超音波診断の適用拡大に関しましては、拙著レビュー論文をご覧ください(Hayashi T. Application of ultrasonography in dentistry. Jpn Dent Sci Rev 2011 )。

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Last updated at April 14, 2026.

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