1.「くちのかわき外来」とは? 2.口腔乾燥症とは? 3.口腔乾燥症の原因とは? 4.口腔乾燥症の検査とは? 5.口腔乾燥症の治療とは? 6.受診をするにはどうすればよいの? 7.終わりに 8.臨床データ使用に関するお願い |
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1.「くちのかわき外来」とは? | |
口腔乾燥症を専門的に診る病院は、残念ながらまだわずかしかありません。 「年でしょ…」「水を飲んでおけば?」と言われた経験を持つ患者さんも少なくありません。 また、「どこで診てもらえばよいのかわからない」という声もよく聞きます。 そのような声を受けて、2003年8月、新潟大学医歯学総合病院に「くちのかわき外来」が開設されました。 外来では、様々な検査を行うことによって、口腔乾燥症の原因を探り、それに応じた治療を専門的に行っています。 2016年現在、1200名近くの患者様が受診されています。患者様の約80%が女性です。また、年齢別では、50代以降の方が多く来院されています。 |
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2.口腔乾燥症とは? | |
1)口腔乾燥症とは? | |
「口が乾燥している」状態を口腔乾燥といいます。 これは、主に口の中の唾液が減少することによって起こるものです。 「口がカラカラする」「ねばつく」「食事のとき水分がないと飲み込みにくい」などの症状が現れます。 また、唾液の量が減少していなくても乾燥感が生じる場合もあります。 |
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2)唾液には、どのような役割があるの? | |
私たちの口腔内には、1日に1ℓ〜1.5ℓもの唾液が分泌されています。 唾液は、主に三大唾液腺である耳下腺、顎下腺、舌下腺から分泌されます。 唾液には、じっとしているときに出てくる安静時唾液と、食事などの刺激によって出てくる刺激唾液の2種類があり、含まれている成分や濃度が異なります。 唾液には、消化作用や洗浄作用、抗菌作用など重要な役割があります。 何らかの原因で唾液が減少すると、「口の中がカラカラする」「会話しにくい」「食べ物が食べにくい」などといった症状が表れます。 また、虫歯や歯周病にもなりやすくなってしまいます。 |
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3.口腔乾燥症の原因とは? | |
口腔乾燥症の原因は、薬剤の副作用、シェーグレン症候群という免疫の病気、ストレス、糖尿病など全身の病気、唾液腺(唾液がつくられるところ)の病気、更年期に関連するもの、心因性のものなど様々です。 | |
1)薬剤の副作用によるもの | |
お薬には、良い面と悪い面(副作用)があります。薬局で発行されるお薬の情報用紙に、「この薬を飲むと、口が渇くことがあります」という記載があるものもあります。もし、そのような記載があっても、自己判断で中止するのは絶対に避け、必ず主治医に相談するようにしてください。 | |
2)シェーグレン症候群によるもの | |
シェーグレン症候群とは自己免疫疾患のひとつで、唾液腺や涙腺などが自分のリンパ球によって攻撃されてしまうことによって、唾あるいは涙が減少するものです。 この症候群は1:13.7の割合で女性に多いと言われています。 |
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3)ストレスによるもの | |
ストレス性の口腔乾燥症も多く見られます。 唾液の分泌は、自律神経の支配を受けています。 この自律神経は、ストレスの影響を受けやすいため、唾液分泌量が減少してしまうことがあります。 |
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4.口腔乾燥症の検査とは? | |
その方の状態に合わせて、下記のような検査を行います。 | |
1)問診など | |
主訴,既往歴,現病歴などについてのお話を伺います。 また、ストレスに関する質問票へのご記入もお願いしています。 初診時の問診は、最初、看護師が行います。 初めて受診された患者さんの不安を、少しでも和らげることができるように心がけています。 |
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2)唾液分泌量の測定 | |
唾液には、安静時唾液(じっとしているときの唾液)と刺激唾液(何か物を咬んだり、刺激を受けたりしているときの唾液)があります。 これらの分泌されるメカニズムは異なりますので、2種類の検査をします。 |
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3)口腔内の診査 | |
お口の中をチェックします。 舌の状態、唇の乾きなどもチェックします。 |
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4)唾液腺の触診 | |
唾液腺を軽く押さえ、唾液がどのくらい出てくるかチェックします。 また、腫れやしこりがないかを調べます。 |
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5)画像検査と血液検査 | |
必要に応じて、唾液腺のエコー検査、レントゲン検査、MRI検査などをします。 また、血液検査も行います。 |
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6)その他 | |
唾液の粘度や口腔内の湿潤度を調べる場合もあります。 口腔内のカンジダ菌やう蝕の原因となる細菌の培養検査をすることもあります。 |
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5.口腔乾燥症の治療とは? | |
治療方法は、原因によって異なります。 治療には、病院で行うものと、ご自身で行えるものがあります。 ここでは代表的な治療方法を記載します。 |
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1)病院で行う治療 | |
<お薬による治療> 唾液分泌促進剤という唾液の分泌を促す薬や、漢方薬を処方することがあります。 <カウンセリング> ストレスが原因の場合は、カウンセリングを行うことがあります。 <他科との連携> 他の病気が原因で口腔乾燥症が起こっている場合は、専門の診療科に紹介して治療を依頼することもあります。 また、お薬の副作用が原因である場合は、そのお薬を処方している主治医に、薬剤の変更・減量依頼をすることもあります。 |
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2)ご自身で行える治療 | |
<保湿剤の使用> ●保湿剤とは? お口に潤いを与える保湿剤というものがあります。 たくさんの種類の保湿剤が病院の売店や薬局の一部などで販売されています。 ●保湿剤の種類 ○スプレータイプ 液体状で口の中にスプレーするもの ○ジェルタイプ ゼリー状で口の粘膜に塗るもの ○洗口液タイプ 液体状でうがいをするもの ●保湿剤の選択 含まれている成分や保湿剤自体の味が異なります。その方の症状や使用する環境に合わせて、適切な保湿剤を選択することが必要です。 また、保湿剤は寝たきりの方や経管栄養の方にも有効です。 寝たきりで口を開けたまま閉じることができない方もいらっしゃいますが、口の中の粘膜がカラカラでひび割れていることも少なくありません。 このような場合、スプレータイプの保湿剤をスポンジブラシなどにつけて湿らせてからケアを行うのがお勧めです。 ケアの後には、ゼリータイプの保湿剤を塗布すると乾燥を防ぐことができます。 <唾液腺のマッサージ> 唾液は、耳の前にある耳下腺、顎の下にある顎下腺、舌の下にある舌下腺から主に分泌されます。 この唾液腺を優しくマッサージをすることで唾液の分泌を促します。 耳下腺マッサージは、耳の前に手をあてて円を描くようにします。 顎下腺と舌下腺マッサージは、顎の骨の内側を親指で軽く押し上げながら、少しずつ親指を前後に移動させます。 マッサージの回数や時間帯は決まっていません。 食事前、テレビを見ながら、お風呂に入った時、布団に入った時など、日常生活の中に取り入れるのがよいでしょう。 <日常生活で気をつけること> 唾液の分泌を調節する自律神経のバランスを整えるために、規則正しい生活を心がけます。 また、冬は暖房器具などによって、空気が乾燥します。加湿器の使用もよいでしょう。 唾液が減少すると、虫歯や歯周病などにかかりやすくなります。 口腔清掃をしっかり行うことも大切です。 |
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6.受診をするにはどうすればよいの? | |
唾液分泌量の測定などの検査は、自費診療で4445円いただいております。 ご来院の際は、お薬手帳をご持参ください。 受診方法、診療日、問合せ先電話番号などは、新潟大学医歯学総合病院口腔リハビリテーション科のホームページをご覧ください。 http://www.nuh.niigata-u.ac.jp/department/dentistry12.php |
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7.終わりに | |
口腔乾燥症は、外見からはわかりづらい病気です。 そのため、周りの方から理解を得られにくく、お一人で悩んでいらっしゃる患者様が多いのが現状です。 でも、あなたの症状を少し和らげることができるかもしれません。 悩む前に、一度、ご来院ください。 |
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臨床データ使用に関するお願い | |
当院くちのかわき外来あるいは味覚外来を受診した患者さんを対象として、患者層、罹病期間、既往歴、服用薬剤などの基本情報、問診票、唾液検査、味覚検査、診断、治療経過などに関するデータをカルテから転記し、統計解析を行う予定です。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。 詳しくはこちらをご確認ください。 |
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禁:無断転載
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臨 床