臨 床 味覚外来

1.「味覚外来」とは?
2.味覚障害とは?
3.味覚障害の原因とは?
4.味覚の検査とは?
5.味覚障害の治療とは?
6.受診をするにはどうすればよいの?
7.終わりに
8.臨床データ使用に関するお願い
1.「味覚外来」とは?
「最近、家族から味付けが濃くなったといわれる」「味を感じにくくなった」「何を食べても砂をかんでいるようだ」などの症状に悩んでいらっしゃる患者様の診療を行っております。

様々な検査を行うことによって、味覚障害の原因を探り、それに応じた治療を専門的に行っています。

2016年現在、500名を超す患者様が受診されています。

2.味覚障害とは?
1)味とは?
味には、甘味、塩味、酸味、苦味があります。
この4つの味を、四基本味と呼んでいます。

また、これらに、旨味を加えたものは、五基本味といわれています。
2)味覚障害の分類
味覚障害の分類の一部について説明します。
味覚減退
濃い味だとわかるが、薄い味はわからないもの

無味症
味を濃くしても、全くわからないもの

解離性無味症
ある味のみわからないもの
例)甘い味だけわからない、塩味だけわからない、など

片側性無味症
左右のいずれかのみわからないもの
例)舌の右側では味を感じるが、左側では感じない、など

自発性異常味覚
口の中に何も入っていないのに、何かの味がするもの
例)常にしょっぱい、常に苦い、など

錯味症
味を取り違えて感じるもの
例)甘い味を苦いと感じる、など
味がわからなくなると、味付けを濃くしがちになります。
特に塩分の摂り過ぎには、注意をする必要があります。
また、味がわからないため、食事を楽しむことができず、ただ機械的に食べ物を口に運ぶ
だけという状態になってしまうこともあります。
食事を楽しむことができないと、食事量が減り、十分な栄養摂取が難しくなってしまうことがあります。

3.味覚障害の原因とは?
味覚障害の原因は、血液中の亜鉛不足、薬剤の副作用、ストレス、全身の病気、耳の病気、舌の病気、中枢神経の障害によるもの、など様々です。
また、味覚は正常であるにもかかわらず、嗅覚が障害されていると、味覚がないと感じることもあります。風邪を引いた後、一時的に味を感じにくくなることもあります。
1)亜鉛不足によるもの
亜鉛は、タンパク質の合成や、酵素の活性化に欠かせない金属です。

厚生労働省が発表した2005年版の食事摂取基準によると、日本人の1日推奨量は、成人男性で9mg、女性で7mgです。
偏りのない食事を摂取していれば、ほぼ摂取可能です。
しかし、食事回数が少なかったり、栄養が偏ったりしていると不足してしまいます。

また、胃腸障害があると、摂取した亜鉛を十分に吸収できないこともあります。
2)薬剤の副作用によるもの
お薬には、良い面と悪い面(副作用)があります。薬局で発行されるお薬の情報用紙に、「この薬を飲むと、食事の味がかわることがあります」という記載があるものもあります。
もし、そのような記載があっても、自己判断で中止するのは絶対に避け、必ず主治医に相談するようにしてください。

4.味覚障害の検査とは?
その方の状態に合わせて、下記のような検査を行います。
1)問診など
主訴、既往歴、現病歴などについてのお話を伺います。
また、ストレスに関する質問票へのご記入もお願いしています。
初診時の問診は、最初、看護師が行います。
初めて受診された患者さんの不安を、少しでも和らげることができるように心がけています。
2)味覚検査
テーストディスクによる検査
さまざまな濃度の味をしみ込ませた直径5mmのろ紙を、舌の前方、後方、左側、右側などにおき、どのような味がするかを調べる方法。

全口腔法による検査
さまざまな濃度の味の溶液を口腔内に1ml注入し、口の中全体で味わってもらい、どのような味がするのか調べる方法。

電気味覚検査
舌の一部分を、弱い電流で刺激し、どの強さで、「金属をなめたような味」がするか調べる方法。
3)血液検査
血液中の亜鉛量やビタミンなどの量を調べます。

5.味覚障害の治療とは?
治療方法は、原因によって異なります。
ここでは、代表的な治療方法について説明します。
1)亜鉛の処方
亜鉛不足によって味覚障害がおこっている場合は、亜鉛を補うための薬剤を処方します。
また、漢方薬を処方することもあります。
2)他科との連携
他の病気が原因で口腔乾燥症が起こっている場合は、専門の診療科に紹介して
治療を依頼することもあります。
また、お薬の副作用が原因である場合は、そのお薬を処方している主治医に、
薬剤の変更・減量依頼をすることもあります。
3)カウンセリング
ストレスが原因である場合は、カウンセリングを行います。

6.受診するにはどのようにしたらよいの?
ご来院の際は、お薬手帳をご持参ください。
受診方法、診療日、問合せ先電話番号などは、新潟大学医歯学総合病院口腔リハビリテーション科のホームページをご覧ください。
http://www.nuh.niigata-u.ac.jp/department/dentistry12.php

7.終わりに
味覚障害は、外見からはわかりづらい病気です。

友達と外食をしても、心から楽しめない、家族の食事を作るのがつらい、食事の時間が苦痛でならない・・・  
そのような悩みを抱えて、お一人で悩んでいらっしゃる患者様が多いのが現状です。

でも、あなたの症状を少し和らげることができるかもしれません。
悩む前に、一度、ご来院ください。

臨床データ使用に関するお願い
当院くちのかわき外来あるいは味覚外来を受診した患者さんを対象として、患者層、罹病期間、既往歴、服用薬剤などの基本情報、問診票、唾液検査、味覚検査、診断、治療経過などに関するデータをカルテから転記し、統計解析を行う予定です。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。
詳しくはこちらをご確認ください。