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ご挨拶
歯科矯正学分野のホームページへようこそ
新潟大学大学院医歯学総合研究科
歯科矯正学分野主任 教授 齋藤 功
はじめに
 当分野は1968年4月、新潟大学歯学部歯科矯正学講座として創設しました。私は、初代福原達郎教授、二代目花田晃治教授の後任として2004年10月より当分野を担当しています。開設以来、何事にも好奇心を示し、能動的に研究も臨床も実践していくことを分野のモットーに掲げています。
 矯正臨床は、治療目標に向かって時々刻々と状況を変化させる歯科医療であり、それを裏づける歯科矯正学の奥深さは計り知れません。私はそれに魅了され、現在まで約30年間にわたって歯科矯正学・矯正臨床に携わってきました。所属スタッフとともに、学理と臨床の融合と相互作用による歯科矯正学の発展を目指し切磋琢磨しています。
当分野の研究概要
 矯正臨床診断への貢献と治療結果の妥当性を裏付けようと様々な研究課題に取り組んでいます。研究のおもなキーワードは、「治療後の長期安定性」、「分析・診断・治療結果における三次元分析」、「形態と機能との相互作用」、「矯正力と周囲組織の反応」、「痛みにかかわる生物学的背景」です。
 矯正治療は、弱い力をかけて歯を移動したり顎の位置を変化させながら新たな形を創造する行為です。患者さんや一般歯科医の方々との一層の信頼関係を構築するには、適切な診断と治療を提供するとともに、治療後における安定性の追究が必要です。顎顔面構造が大きく変化する顎変形症例では、治療後における顔貌の予測精度の向上に寄与する三次元分析法の確立を試みています。矯正治療後の安定性の検証については、矯正単独治療あるいは外科的矯正治療後の長期経過、歯の自家移植を併用した矯正治療例の長期経過などの研究成果を発表してきました。また、顎顔面の構造的非対称の成り立ちや適応変化、顎態の不調和と摂食・嚥下機能との関連性を調べ、形態に対する機能の適応や相互作用の解明にも取り組んでいます。
 古くて新しい領域である歯の移動と痛みの発現、周囲組織の生物学的反応についてはまだまだ未解明な部分が多く、関連分野の協力を得て新しい手法を用いた組織化学的あるいは分子生物学的検索を進めています。加えて、治療期間の短縮化を目指した歯の移動の効率化への薬物応用の可能性にも取り組みたいと考えています。
 2005年から2017年までの10年間で、論文賞、学術大会優秀発表賞などを17件頂戴したことは誠に名誉なことであり、私たちの研究成果が意義あるものとして評価されていることの一つの証と考えます。今後も関連する基礎系・臨床系他分野あるいは他大学との連携を図りながら、スタッフ一同、歯科矯正学および矯正臨床の背景にある隠された真実の追究を続けていくつもりです。
 研究テーマごとの成果や研究業績の詳細については(詳しくは「研究」などをクリックすると業績詳細に遷移するように)をご覧ください。
新潟大学医歯学総合病院矯正歯科における臨床の特色
 私たちの診療科では、小児から成人に至るまであらゆる年齢層を対象に、一般矯正治療はもとより他科との連携による協同治療を多く手がけています。当科における臨床統計調査では、初診時年齢20歳以上の成人患者さんの割合が30%を超えています。ニーズが多様で口腔内が複雑化している成人患者さんに対し、より質の高い治療を提供するためには他科の協力が不可欠です。外科的矯正治療を適用する顎変形症例、多数の診療科が関与して長期に治療管理する口唇裂・口蓋裂症例、先天性欠如や歯周疾患による多数歯欠損を伴った症例などが例として挙げられます。
 さらに近年では、骨を固定源とした歯科矯正用アンカースクリューや矯正用インプラントアンカー(仮称)が普及し、矯正治療の戦略性拡充が期待されています。当科でも10年ほど前より導入し、適応症か否かを十分検討しながら利用しています。矯正治療の基本概念を踏まえつつ、アンカースクリュー・インプラントアンカーをはじめとする新しい治療手段を取り入れ、その有効性を真摯に検証しながら、様々な様態を示す患者さんを幸せへと導けるよう取り組んでいく所存です。
歯科矯正学・矯正臨床に興味をもつ方々へ
 私たちの分野へは、大学院生として入局してもらうこととしています。大学院で履修する意義の一つは、ともすれば受動的学習が主体であった大学までの生活から脱却し、自ら探求してみたいテーマについて試行錯誤しながら研究内容をまとめる過程を経験することです。2004年10月以降、2019年3月現在51名が学位を取得しています。学位取得者のうち7名は留学生で、アジア各国において歯学領域のリーダーとして活躍できる人材の育成にも力を入れています。
 また、私たちの診療科は、公益社団法人・日本矯正歯科学会が指定する基本・臨床研修機関です。学会が定める到達目標に準じて矯正臨床教育システムを構築し、基本的知識と技能ならびに倫理観を具備する日本矯正歯科学会認定医の育成も目指しています。2008年度に施行された日本矯正歯科学会認定医新制度下において、2019年度末現在29名が認定医資格を新規に取得しています。私たちの分野では、治療に対する基本コンセプト、治療ゴールの設定が指導者間で大きく異ならず、分析・診断はもとより治療段階に応じたきめ細やかな指導を心がけています。

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